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特集 宿日直許可について 宿日直許可について

なぜ宿日直許可の取得を検討する医療機関が増えてるの!?

 多くの医師が医局派遣や副業として、常勤先以外の医療機関でも勤務をしています。医師の派遣を行っている医療機関にとっても、医師の派遣を受けている医療機関にとっても、今後は総労働時間が上限を超えないように、副業先を含めた労働時間の管理が求められるようになります。
 そこで重要になるのが、医療機関の「宿日直許可」の取得有無です。宿日直許可を受けた場合には、その許可の範囲で、労働基準法上の労働時間規制が適用除外となるため、時間外労働の上限規制において、大きな意味を持ちます。

 宿日直許可がある副業先であれば、原則的に勤務時間とみなされないため、医師の派遣を受けている医療機関にとっては、医師派遣の引き上げや非常勤医師の採用ができないといった可能性を避けることができます。

宿日直許可を取得するメリットは??

 医療法第16条に基づく宿直を医師に行わせること自体に労働基準監督署長による宿日直許可は必要ありませんが、上記で述べたように、宿日直許可を受けた場合には、その許可の範囲で、労働基準法上の労働時間規制が適用除外となります。

  1. 宿日直許可を受けた場合には、医師の時間外労働の上限規制との関係で労働時間としてカウントされないこと
  2. 勤務と勤務の間の休息時間(勤務間インターバル)との関係で、宿日直許可を受けた宿日直(9時間以上連続したもの)については休息時間として取り扱えること

など、医師の労働時間や勤務シフトなどに対して非常に重要な要素となることが考えられます。

Example

 例えば、救急患者が深夜以降減少する傾向にあり、ほとんど救急対応がない時間帯として23:00~8:00までの時間帯について、宿直許可を取得した場合、
 同時に9時間の勤務間インターバルも取得できることになります。

最後に

 宿日直許可を取得することなく、これまでと同様に労働時間と算定される宿日直が続いてしまうと、長時間労働を余儀なくされ、連続勤務制限や勤務間インターバルの遵守が難しくなってしまいます。
 医師が不足している中、医局派遣や外部の非常勤医師により、常勤医師の負担を軽減しながら病院運営を行ってきた病院においては、時間外労働時間の上限規制により、今まで以上に医師の確保が困難になる可能性があります。
 宿日直の許可は、所属診療科・職種・業務の種類(病棟宿日直業務のみ等)に限って受けることもできるため、現状を把握した上で、どのような体制であれば許可が取得できるか、取得ができた場合には、どのくらいの総労働時間になるのかを検討しながら、医師の勤務負担軽減が求められます。

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固定残業制度について

はじめに

 医師は、患者の命や健康の為なら長時間労働もいとわずに働く人が多く、残業という概念が薄い傾向にあります。しかし、病院の理事や管理職でもない限り、医師も労働者に該当します。
 医師については、その仕事の特殊性も踏まえ、残業時間の上限規制が適用除外となっていましたが、2024年4月からは、その適用除外も外れ、より厳格な労働時間管理が求められるようになります。

固定残業は業界の常識!?

 病院で働く医師に多く適用されているのが、固定残業制度。多くの医師が固定残業制度や年俸制度で雇用されているのではないでしょうか。ただ、他の業界に比べ、その実態はあまり厳格に行われていないように感じます。せっかく導入した固定残業制度も、無効と判断された場合には、固定残業代部分も含めて残業の基礎とし、未払い残業代の精算を求められることになりますので、運用には注意が必要です。
 固定残業制度が有効に機能するためには、最低限クリアしなければならない要素が3つあると言われています。

要素1:固定残業代部分が、それ以外の賃金と明確に区分されていること

要素2:固定残業代部分には、何時間分の残業代が含まれているのかが、明確に定められていること

要素3:時間外労働(残業)時間が、上記2で定めた時間を超えた場合は、別途割増賃金を支払うこと

要素1:固定残業代部分が、それ以外の賃金と明確に区分されていること

 固定残業制度が無効とされるよくある例が、固定残業代部分が基本給(本俸)に含まれているという制度です。要素3にも繋がりますが、固定残業制度というのは、あらかじめ〇〇時間分の残業代を支払っておくという性質であることから、実際に固定残業代部分を超える残業代が発生した際には、その差額を追加で支払う必要があります。
 通常、固定残業代に含まれている時間外労働時間数を超えない範囲で働いている分には、問題は発生しないのですが、あらかじめ定められた時間外労働時間数を超過した場合には、一気に問題が表出します。追加で残業代を支払おうとした時に、何を残業の基礎として残業代を計算すればよいのかがわからないという問題です。
 固定残業代部分は、残業代の前払いですから、残業計算をする際には、固定残業代部分を残業の基礎に含めずに計算するのが一般的です。ただ、その固定残業代部分が基本給に含まれているとなると、残業代を計算することができません。つまり基本給に固定残業代部分を含むというのは、「追加で残業代を支払うつもりはありませんよ」と宣言しているに等しいのです。もちろんこのような制度は司法の場では、無効と判断される可能性が非常に高く、リスクを多分に含んでいますので、早急な改善が求められます。

要素2:固定残業代部分には、何時間分の残業代が含まれているのかが、明確に定められていること

 要素1でも触れましたが、固定残業制度は、あらかじめ定められた時間外労働時間数を超過した場合には、差額を支払うことによって成立する仕組みですから、当然、規程に根拠も必要となりますし、個別の雇用契約書又は労働条件通知書にも、どの手当に何時間分の時間労働労働時間数が含まれているのかを明らかにしておく必要があります。
 よく問題となる例は、定額残業代部分に、残業も深夜勤務も、さらには宿直手当も含むという設計になっているようなケースです。時間外勤務手当に対応するものとして固定残業手当、深夜勤務手当に対応するものとして固定深夜手当というように分けて設計されていれば何時間分に相当するのかというのも明確になりますが、時間外勤務も深夜勤務も含むとなると、一方は×1.25、もう一方は×0.25(深夜残業の場合は×1.5)となり、それぞれの割合に応じて時間が変わってしまいます。
 こういった制度設計が直ちに固定残業代を全否定する要素になるかというと、議論の余地はありますが、労働者側から見た時には、一体何時間残業したら追加で残業代が支給されるのかが非常に分かりにくく、固定残業制度を否定する材料にはなり得ます。特に固定残業代部分に宿直手当まで含むような設計になっている場合は、ほぼ認められないと考えてよいでしょう。
 1つの割増賃金に対しては、1つの手当という設計が望ましいと言えます。

要素3:時間外労働(残業)時間が、上記2で定めた時間を超えた場合は、別途割増賃金を支払うこと

 固定残業制度は、残業の有無に関わらず、残業代をあらかじめ支給しているという性質に過ぎないことから、当然ですが、実際の残業代があらかじめ支払っている固定残業代を上回るような場合には、差額を追加で支給する必要があります。
 設計上のポイントとしては、極力、固定残業代に含む時間外労働時間数を医師毎に差をつけないという事です。よくある悪い例としては、適当なキリの良い固定残業手当を支給し、後から割増単価を計算して、割り返すことで相当する時間外労働時間を算出するという例です。このやり方をする限り、固定残業代に含む時間外労働時間数にバラツキが出てしまいます。
 私の経験上、1人ひとりに割り振られた時間外労働時間数がバラバラという設計の場合、給与計算担当者が誰が何時間分固定残業を割り振られているのかというのを管理することができず、結果として残業代を追加支給していないというケースが非常に多いと感じています。また、管理する上司の立場としても何時間を超えたら、残業代の追加支給が必要になるのかをすぐに判断することが出来ないないことから、部下指導の立場から見ても、あまり良い制度だとは思えません。
 全員一律にするか、差をつけるのであれば、実態の残業時間を調査したうえで、役職に応じて時間外労働時間を設定する、又は担当課に応じて設定する等、明確なラインを設けて設計していくべきでしょう。

最後に

 固定残業制度は、労働時間を削減しようとするのであれば、決して望ましい仕組みだとは言えません。ただ、今までの医師は、患者の命を救う為、健康の為という崇高な使命のもと、時間をいとわずに働き、病院側もそれを黙認しながら、時間に関係なく、賃金を支給する。そんな中で現在の医師の賃金相場が形成されてきたことも事実です。その前提を無視して、賃金制度を構築しようとしても、良い制度を作ることは出来ません。
 また、医師の賃金相場は、他の職業と比べても非常に高いことから、未払い残業代を請求された時の請求金額も非常に高くなる傾向にあります。
 医師についても働き方改革が求められる時代、目の前に命の危機が迫っている患者がいるのにも関わらず、労働時間を抑制していかなければならない。その答えは、私の中でもまだ結論が出ていません。ただ、その時代に合った制度に早く変更していく必要はある。そう強く感じています。
 現時点では、固定残業制度は、医師と切り離せない制度だと言えます。固定残業制度を導入する場合は、少なくとも3つ挙げた要素のポイントを押さえて設計することが求められます。

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年俸制について

はじめに

 年俸制とは、ボーナスなどを含む給与の総額を1年ごとに決定する賃金制度を言います。たとえ年俸制であったとしても、労働基準法では毎月1回以上、一定期日に支払うことが定められている為、毎月決まった日に賃金を支給する必要があります。
 年俸制の制度・仕組みは、病院ごとに異なりますが、月例給与と賞与、その他残業代や宿直手当までを含めた1年間の賃金総額をあらかじめ病院と医師で契約しているようなケースも見受けられます。

年俸制を採用すると残業代を支払わなくてもいい!?

 年俸制で最も多い勘違いが年俸制に残業代も含んでいると認識しているケースです。確かに年俸制の多くが管理職に対して導入されているという統計もありますが、残業代を支払わなくてもよいというのは、管理職だからであって、年俸制を採用しているから残業代を支払わなくてもよいということにはなりません。
 最近の判例でも、年俸制の適用を受けている医師であって、法人と従業員の間で雇用契約に時間外労働及び深夜労働に対する割増賃金を含むとの合意があったにも関わらず、従業員側が医療法人を提訴し、法人側に割増賃金の支払いが命じられています(医療法人康心会事件:平成29年7月7日)。この医師の年俸は1,700万円と高額であったことから、労働者の保護に欠ける恐れはないのではないかとの考えもあり、非常に注目された裁判です。

裁判の趣旨

 原審の高裁判決では、年俸制に割増賃金を含むという合意は、医師という業務の特質に照らして合理性があり、労務の提供について自らの裁量で律することができたことや、賃金が相当高額であったことなどからも、労働者の保護に欠ける恐れがないとして、医師の請求を棄却しています。
 しかし、最高裁では、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別できないことを理由に割増賃金が支払われたということはできないと判断しています。
 この点については、「固定残業制度について」という記事で詳しく解説していますので、そちらもご覧頂ければと思います。

年俸制を採用すると、さらに残業代が高額になる場合がある!?

 年俸制は、割増賃金を年俸に含むことだけを目的に導入するのであれば、基本的には月給の固定残業制度と何ら変わりはないことになります。ただ、残業代を計算するうえで、年俸制ならではの注意点があります。

 年俸1,800万円、月例給与で毎月100万円、夏と冬のボーナスで300万円ずつを支給するような年俸制を例に考えてみましょう。

 労基法では、「臨時に支払われた賃金」と「1か月を超える期間ごとに支払われる賃金」については、残業代の計算基礎に含めなくてもよいものとしており、これを根拠に通常の月給制では賞与を含めずに残業代を計算しています。
 ただ、この扱いについて行政通達では、「支給額があらかじめ確定されていないもの」を言い、「支給額が確定しているものはボーナスとはみなさない」としています。
 つまり、年俸制であらかじめ賞与の金額が確定しているような制度の場合、賞与の金額を12分の1したものを残業の計算基礎に入れて計算する必要があるということです。
 先程の年俸1,800万円のケースでは、毎月の給与100万円に賞与600万円を12で除した50万円を上乗せした150万円を残業の基礎として割増賃金を計算する必要があります。年俸制を良く理解しないままに、年俸制を導入すると、かえって高額な残業代を請求される可能性があります。

最後に

 年俸制は、管理監督職のような割増賃金の支給対象とならない医師に対してのみ適用するというのであれば、有効に機能する可能性もありますが、一般の医師に適用しても適用するとなると、いわゆる固定残業制度となんら変わらない制度になってしまいます。
 医師の賃金は一般的に高額で、かつ労働時間管理がまだあまり進んでいない法人が多く、一旦未払い残業問題が発生すると、非常に高額な請求になりがちです。一般企業と比較しても労務リスクは非常に高い職種だと言えます。安易に年俸制を選択するのではなく、年俸制の正しい運用ルールを知ったうえで、適切な賃金制度を導入することが大切です。